その2 り

リスマルク
メキシコの覆面レスラーである。

プロレスが盛んな国って3つあって、日本、アメリカ、そしてメキシコである。
ヨーロッパにも、試合が地味で有名なオットー・ワンツ率いる団体があるけど、この3国に比べると劣ってみえる。

メキシコのプロレスって、ルチャ・リブレって言うんだけど、よく『自由への戦い』って訳されてたんだけど、これがまた酷い誤訳だったそうで、実は『自由な戦い』なんでもありってのが正解らしい。
このルチャ・リブレ、我々が知ってるプロレスとは多少ルールが違うが、覆面レスラーが多くて空中殺法がいっぱいの見た目に楽しいレスリングだ。

なぜ、メキシコには覆面レスラーが多いのか。
聞いた話によると、メキシコってのはビンボな国なもんで、普通に仕事してるだけじゃ生活できなかったらしい。
なので、昼間は普通に仕事して、夜には正体を隠す為に覆面かぶってレスリングって人が多かったそうだ。
一見華やかに見える覆面にも実は少し悲しい理由があるんですね。

マスカラ・コントラ・マスカラって試合ルールがある。日本語にするとマスク剥ぎデスマッチ。
試合で負けたらマスクを脱いで、その後は素顔で試合に出ないといけないってルールだ。
大人はわかってるだろうけど、プロレスには脚本がある。どこまで詳細な脚本かはわからないけど、どっちが勝つかは最初から決まってる。
マスク剥ぎデスマッチも最初から勝者が決まってる。
負けるのが決まってるレスラーがすることは自分のマスクの価値、つまり値段をあげる交渉だ。

プロレスをバカみたいって言う人がいるが、大間違いである。

大の大人がテーマ曲にのって、パンツ一丁で入場してきて、戦うのだ。
時にはパイプ椅子で殴られて血まみれになるのだ。
コーナーポストからボディアタックをすると、アナウンサーは『人間が大空を飛んだ!』って叫ぶのだ。
観客は最初から勝ち負けの決まった試合を興奮して見るのだ。

バカみたいじゃない。バカなのだ。



次回は『く』


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